昨今若者の車離れを始め、カーシェアリングやサブスクリプションなど、車の所有、買い方の変化など車業界を取り巻く環境は大きく変化しています。またインターネットの普及により、ユーザーは実店舗に行かなくてもWebサイト上で気になる、欲しい車を探すことができるようになっています。本記事ではそのような環境下において、カーディーラーや自動車販売店がWeb上でどういった集客をしていくべきなのか。そしてWeb広告の中で最もスタンダードですぐに効果の出やすいリスティング広告にフォーカスして、効果的な広告の打ち方を解説していきます。

リスティング広告の特徴

実際に改善のポイントを解説していく前に、まずはリスティング広告とはどういった広告媒体なのか、その特徴などについて簡単に確認していきましょう。

※スポンサーとついているものが広告で、通常の検索結果は広告の下に表示されます。

リスティング広告はGoogleやYahoo!といった検索エンジンの検索結果画面に表示される広告のことで、あらかじめ広告を表示させるキーワードを設定しておき、ユーザーがそのキーワードを検索した際に広告が表示されます。

最大の特徴としては、ユーザーが自身で検索をしている≒自身で必要な物事を認識できている、という点でニーズが顕在化しているユーザーに対してアプローチがしやすい、と言えます。それに対して、ディスプレイ広告など他の媒体はユーザーのWebサイトの閲覧状況やWeb上での行動履歴などを元に興味関心などでターゲティングを行うため、ニーズが潜在的なユーザーへの配信が有効とされています。

カーディーラー・自動車販売店におけるリスティング広告の効果的な打ち方のポイント

そんなニーズが顕在化しているユーザーに対しての広告配信がしやすいリスティング広告ですが、Web広告の特徴を活かした、効果的な打ち方のポイントをご紹介していきます。

ターゲットとするユーザーのニーズ・収入層ごとにキーワードを使い分ける

車は同じジャンルでも価格帯が非常に大きく異なります。そのため、同じ車だからと言って例えば低価格のコンパクト軽自動車と高価格帯のSUVとを同じようなキーワード構成で買い付けても効果が出にくい場合があります。特にこの傾向はメーカーごとの特徴や車両の価格帯(≒お客様の収入層)によって3つのタイプに大別することができます。

①ベーシックモデルの低価格帯軽自動車や普通車を探している層(収入は低め)

②高価格帯の軽自動車やミニバン、中価格帯のSUVを探している層(収入は低〜中)

③ブランド名やブランドごとの特徴を重視して車を探している層(収入は中〜高)

まず①については車が”欲しい”、と言うよりも車を”必要”としており、収入的な面や車への興味関心などから「この車が欲しい」と言うよりも「この予算内で車が欲しい」と考えていることが多い傾向にあります。

検索をする際にも特定の車種というよりも、一般的な車両のジャンルの名称かつ価格に関するキーワードを掛け合わせて検索することが多い層といえます。

そのため、この層へアプローチをしていく際には「軽自動車 + 価格に関するキーワード」「普通車 +買い方に関するキーワード」などのようなキーワードでの配信が有効で、特に自動車販売店での購入確率が高い層といえます。

②については軽自動車の中でもカスタムモデルであったり、デザイン重視の車種、普通車ではSUVやミニバンなど、”特定の車種が欲しい”と考えていることが多い傾向にあります。

検索をする際には車種名に何かしらのキーワードを掛け合わせて検索したり、来店時にはスタッフの紹介前に車種が決まっていることもあります。

そのため、この層へアプローチしていく際には車種名ごとでキャンペーンやグループを作成し、それに合わせたキーワードや広告文での配信が有効で、自動車販売店でもカーディーラーでも購入確率が高い層といえます。

③は②と若干被る部分もありますが、比較的収入が高く、”特定のブランドや車種が欲しい”と考えていることが多い傾向にあります。

購入金額にもある程度融通が効くため、気になっているブランド内でどの車を探すか、という検索思考になることが多く、ブランドごとの特徴などを重視している傾向も他の層に比べて強い場合があります。

そのため、この層へアプローチしていく際にはブランド名やメーカー名をメインに、モデル名やニーズなどを掛け合わせキーワードとして買い付けるような配信方法が有効で、カーディーラーでの購入確率が高い層といえます。

世帯年収でのターゲティングを行う

前述の通り、車の購入に当たっては収入そうやニーズによって大きく3つの種類がありましたが、リスティング広告(Web広告)[2023年10月時点ではGoogle広告のみ]では世帯年収別でのターゲティングも可能です。

※Google広告では広告グループ別にユーザー属性(世帯年収・年齢・男女・子供の有無)でのターゲティングも可能。

この世帯年収はWeb上での行動履歴などを元にした推定値ではありますが、より配信効率を高めていく場合には、上記の3種のどれに当たるのかなどを考えながら設定していきましょう。

商圏・お客様の住所を元に、目的に応じた配信地域の設定を行う

リスティング広告(Web広告)は市区町村単位での配信地域の設定も可能です。そのため、商圏はもとより、実際の顧客の住所の分布などを元にした、配信地域の設定が重要です。

また、広告配信の目的に応じて、この地域設定も変更していきましょう。

例えば、商圏内でシェア率を高めていきたいのであれば、顧客の分布が多い地域をメインに設定します。

新規をより多く獲得していきたい場合には距離的には十分来店が可能なのに、顧客が少ないエリアを重点的に設定していく、など目的や商圏に応じて配信地域の設定を変えていくと、無駄なく効率的な配信が可能です。

自社の企業名や固有のサービス名などの”バイネーム”、”指名検索”の配信も行う

“バイネーム”とは「名指しで」「指名で」という意味で”指名検索”などとも言い、Web広告においては「自社の企業名やサービス、ブランド名などの固有名詞のキーワードでの広告配信」を指します。

基本的にバイネームで検索してくるユーザーはすでに自社を知っている場合が多いため、当然オーガニックでの流入も非常に多く、広告でもクリック率やコンバージョン率なども非常に高くなることが一般的です。

では、なぜあえてそういったキーワードでの配信をするのか。

その理由は「自社を目指してきたユーザーを確実に集客すること」と「競合他社への流出を防ぐ」の大きく2つが挙げられます。

前者においては、言うまでもありませんが、確実に自社のWebサイトへ訪れてもらうためにも、重要な要因となります。

もしキャンペーンなどを行っていて、見てもらうページを操作したいのであれば、SEOなどで切り替えを行うよりもより確実で即効性があります。

そして後者においては、「広告なんて打たなくても、SEOで上位に来るから」という言い方もできるかと思います。

ただ、リスティング広告においては他社のサービスをキーワードとして買い付けることも可能です。

つまり、自社の検索結果よりも上に他社の検索結果が表示される可能性も大いにあります。

もし安く車を買いたい、と考えているユーザーが自社よりも低価格で同車種を取り扱っている、という他社の広告を見たら、そちらに流れてしまう可能性もあります。

バイネームでの配信はこういった流出を防ぐ効果も見込めるため、ぜひ配信を行う際には選択肢の1つにしていただければと思います。

目標とする数値

続いては配信を行っていく際の目標数値についてです。

ここでは確認がしやすく、設定も容易な指標としてクリック率(CTR)&クリック単価(CPC)、コンバージョン率(CVR)、コンバージョン獲得単価(CPA)を例に見ていきましょう。

ただし、あくまでもこれらの指標は目安で、買い付けるキーワードや競合の状況、時期、入札戦略などによって大きく異なりますので、参考数値として、見ていきましょう。

CTR&CPCを目標の指標とする場合

入札戦略でクリック数の最大化などを設定しており、まずはWebサイトへの集客数を確保したい、という場合にはCTRとCPCを指標として見ていきましょう。

①の場合ーCTR目標:8〜10.0%  CPC目標:¥60〜¥90

②の場合ーCTR目標:10〜12.0%  CPC目標:¥80〜¥100

③の場合ーCTR目標:9〜11.0%  CPC目標:¥80〜¥110

クリック数の最大化などは広告の配信数値のみを指標とするため、時期によってCTRもCPCも差が出ることがあります。

また、地域によっても平均的な数値に差が生まれることがあるため、上記の範囲内で収まる、あるいは上記の範囲内に達することを1つの目標として配信を行いましょう。

CVRを目標の指標とする場合

入札戦略でコンバージョン数の最大化などを設定している場合にはこの指標を目標とします。

この指標はWebサイト内でどういったコンバージョンを設定しているかによっても率が大きく変わりますが、一般的な来店予約やお問い合わせ、お見積もりなどの、いわゆるリード情報の獲得をコンバージョンとして設定している場合には、一般的なキーワードからの流入であれば1%を、バイネームであれば10%を目標としていきましょう。

ただ、繰り返しになりますが、上記の目標はあくまでも目安であり、広告の管理画面で見た場合やGoogle広告の来店や通話数などを含めた場合、またコンバージョンの内容によってはこれを大きく上回る場合もあります。

あくまでもこれらの数値は目安として、目標設定を行っていきましょう。

CPA(CPO)を目標の指標とする場合

ここまでは率の指標が多かったですが、一般的にはこの数値を目標とすることで、より実際の売上に対しての広告費用対効果が出しやすいと言えます。

ただ、この指標も販売する車種によって販売単価や利益率が大きく異なるため、目標値は可変となります。

ここでは最も一般的かつ簡易な目標CPAの出し方をお伝えします。

まず、目標CPAを求める上では、実際にどれだけのCPAがかかってもよいのか、と言う限界CPAを割り出していきます。

この限界CPAを超えるような場合は、広告予算が利益を上回ることになり、赤字になるといえます。

限界CPA = 100万円(単価) - 70万円(原価) - 10万円(経費) = 20万円

そして限界CPAが割り出せたら、どの程度利益を残しておきたいか、を設定します。

その残しておきたい利益を限界CPAから引くと、目標CPAを割り出すことができます。

目標CPA = 20万円(限界CPA) - 10万円(残しておきたい利益) = 10万円

まとめ

本記事では自動車販売店、カーディーラーにおけるリスティング広告配信のポイントや目標数値について解説しました。

ただ、繰り返しにはなりますが、記事内でご紹介した内容はあくまでも代表的かつ対応が比較的簡易なものをピックアップして解説をしており、実際の運用においては上記以外にも様々なポイントがあります。

弊社では地域最大級の自動車販売店やカーディーラーでの広告配信実績もございますので、インハウスでの配信に限界を感じている際にはぜひご相談ください。

また、代理店に運用を任せているけれど、本当に効果的な運用ができているのか?といった際にご活用いただけるASO(Adtech Second Opinion)診断サービスもご用意しておりますので、インハウス運用、代行運用問わず、ぜひ一度診断をしていただければと存じます。